夜の闇の下。
小さな本屋が在りました。
新月の灯りより暗く、満月の其れより明るい看板には、
月乃猫書房と謳って在りました。
扉の前で立ち往生していますと、
何処からとも無く声が聞こえて参ります。
「この書房にて取り扱う本は、深海の闇の様な物語であったり、
此処では無い何処かの物語であったり、
また、ほんの僅かな呟きや囁きや戯れ言ばかりで御座います。
標本箱の中の鉱物を選ぶ少年がお好みならば
お気に召す物語が御座いましょう。
さあ、どうぞ中へとお進み下さいませ。」
暇をもてあまし、
大概は昼寝に興じて居ります店主に気付かれてしまいました。
そんな屋根の上から降る声に惹かれたのなら、扉の鍵は開いた筈。
月乃猫書房、開店で御座います。
下弦の月を思わせる店主の笑みが闇と幻想と耽美へと誘います、、、