前略。

 その後、具合は如何かい?
 医者が良いと云うまで、ゆっくりと養生する事だ。こればっかりは、君や僕がとやかく云っても仕方がない事だから。
 先回の君からの手紙を読んで、もしかしたら何か気に病んでいる事が有るのでは無いかと心配しているんだ。いやなに、気を病んでいるからこそそんな白い部屋に居るのだけれど。
 君は自分が真っ当ではないと診断された事を、負い目のように感じているのではないかい? それならお門違いもいいところだ。この世の中に真っ当な人間がどれ程居ると云うのだい? 確かに真っ当だと云う人間は沢山居るだろうよ。でもその人たちは本当に真っ当なのだろうかね。本人が気付いていないだけ。医者の診断が無いだけじゃあないだろうか?
 僕は思うのだけれど。果たして僕こそが真っ当じゃあなく、気付いてしまった君の方が本当は真っ当なんじゃあないかと。
 そう思えばほら、君が気に病むような事なんかこれっぽっちもありゃあしないんだ。ただ其処で真っ当なお医者の先生が良いと仰るまで、静かに過ごしていれば良いんだよ。
 それじゃあね。

 草々。



 僕はその便箋を、丁寧に、丁寧に角を揃えて折って紙飛行機を作る。先の尖った直線的な紙飛行機は空気を裂きながら飛び、開かれたままの窓の外へ消えていった。白い壁と白い天井の間の、蒼く切り取られた天へ。
 僕は少しだけ笑って見送る。それからゆっくりと、手紙をくれた隣の寝台の君を想った。






‥了

創英社 第14回『超短編』コンテスト入選
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