地上に降りた罪に片翼をもがれる。

二度と羽ばたけないように。
二度と罪を犯さないように。

流れる体液で白かった羽根が紅黒く穢れる。
その重さは耐え難く、残った片翼さえ足元に引き摺る。



背中の痛みなど、君と引き裂かれた痛み程も感じない。



僕の世界は空。
君の世界は地。

君が好いてくれた僕の羽根。
片側の翼しかなくても、君は僕だと気付いてくれるだろうか。

君は僕を受け容れてくれるだろうか。



このまま堕ちていこう。
君のところへ。





「大丈夫だよ、」
 地上に堕ちた僕を君は微笑んで迎える。
 君が僕を抱くように回した手で背中の片翼を撫でると、部屋一面に毀れた羽根の欠片が散らばった。重かった翼と心がゆっくりと軽くなる。
「此処ではこんなもの要らない。」
 触れ合った頬の温かさで、君の想いが伝わった。恐らくは君の背中にも瑕(きず)が有るのだろう。
「君が要らないなら、僕もそんなものは要らない。」
 柔らかい風が吹き込む度に、破片はさらさらと粒子になり、小さく発光して空気に溶ける。
 全身に君を感じながら、僕は瞳を閉じた。





君が居るなら、僕は片翼さえ要らない。






‥了
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